沖縄旅行で知った沖縄の雨の考え方の違い~そこから味わう沖縄の歴史~

沖縄との違いのひとつは
天候に対する考え方。

日頃の頑張りへのご褒美に。自分自身との対話をしに。凝り固まった価値観を洗濯するためー 私にとって沖縄旅行は、人生の「リズム」を整えるための、とても大切な時間だ。
現在は控えているが、さまざまな情勢が落ち着いたらまた、あの素晴らしい景色、偉大な自然、力強い笑顔の人々に会いに出かけたいと思っている。

沖縄旅行初心者だった頃は、沖縄と自分の故郷・東北との、さまざまな考え方の違いに幾度も驚かされた。なかでも鮮明に覚えているのは、天候に対する考え方の違いだ。
沖縄の某離島で出会い、仲良くしてくださった地元の方いわく、「こっちでは雨は恵みだから、あんまり傘さす人はいないんだよ」とのこと。
急な天候の変化、通り雨が多い沖縄では、濡れることを嫌がらない人が多いのだという。
確かに私が幼少期を過ごした北東北では、雪の日に傘をさす人が少なく、東京では少しの雪でも傘をさす人が多いのを見て驚いたことがある。
なるほど、文化の違いとはそういうものかと理解しつつ、その時はそこまで深く考えていなかった。
しかしその後、土地の歴史を調べていくと、その離島は貯水施設が整備されるまで、干ばつの度に水不足に悩まされ、サトウキビに撒く水どころか、生活用水にも苦労した歴史があったと知った。
そうした背景を学ぶと、「雨は恵み」という言葉の重みが変わってくる。
もっと風俗的、宗教的、伝統的な考え方が根本的にあるのかもしれないが、「傘をさす、ささない」という小さな違いにも、長い歴史が関わっているのだと、改めて教えてくれた出来事だった。

雨にまつわるエピソードはまだある。これも沖縄旅行初心者だった頃の話だ。
その日は、ボートで沖に出てシュノーケリングを楽しむアクティビティを予約していた。
あと1時間ほどで集合時間、というタイミングで、急な大雨に見舞われたのだ。空は真っ暗、レンタカーのフロントガラスにぶつかる雨粒の音は大きく、道行く人も少ない。
こんな大雨では船も出ないだろうから、アクティビティは中止だろう。
しかし、確認のために予約していた会社に電話してみると、「え?雨ですか?ああ!そうですね、降ってますね。でも風がないから大丈夫ですよ!予定通り決行します」との返事。
電話の向こうは、思ってもみなかった話に驚いて笑ってしまったのだろう。子どもをなだめるようなやさしい声で対応してくれた。
電話を切った私は途端に恥ずかしくなった。
そうか、突然の大雨なんて、こちらでは日常茶飯事。強風でなければ船は出せるのだ。こんな程度でいちいち中止していたら、アクティビティなど成り立たないだろうー そう、ここでも、天候に対する考え方の違いを感じ、いかに自分の価値観が狭いかを思い知らされたのだった。
その後無事に船は出航し、雨の中でシュノーケリングを楽しむことができた。

ほかにも、小さな離島でサイクリング中、大雨で全身ずぶ濡れになったこと。取材中のスコールでは機材を守るのに必死だったこと。雨上がりに美しい空を見て感動したこと。
「沖縄と雨」のエピソードは、毎年増え続けている。晴れでも雨でも楽しい。そんな沖縄を再び旅する日を、今はただじっと待っている。