意外な「沖縄そば」の世界。その特性は地域ごとに違う?
沖縄の食文化を旅する
~明日話したくなる「沖縄そば」の世界~
この読者の中でもご存知の方も多い「沖縄そば」。
一般的に「沖縄そば」といえば、三枚肉(豚バラ肉)、かまぼこ、ねぎ、そして紅生姜がのった、豚骨+かつおベースの麺料理を思い浮かべるだろう。
しかし、ひとくちに「沖縄そば」と言っても、実はトッピングはさまざま。そして、地域性もさまざまなのである。
代表的な「沖縄そば」は、先ほど述べた「三枚肉」がのったものだ。麺は少し縮れた平打ちが主流。お好みでこーれぐーす(島唐辛子の泡盛漬け)をかけると、風味がガラリと変わって楽しい。
トッピングを「三枚肉」から「ソーキ」に変えると、「ソーキそば」になる。ソーキとは、豚の骨つき肉のこと。じっくり煮込まれたソーキは、軟骨までトロトロ。三枚肉の上品な美味しさとは異なる、少しワイルドな味わいが魅力だ。
ほかにも、シャキシャキの野菜炒めがのった「野菜そば」、たっぷりのアーサが嬉しい「アーサそば」など、店によってアレンジは多彩。
トッピングとは異なるが、客席に常備されている調味料の中に、カレー粉がある店もある。前半はそのまま、後半でカレー粉をふりかけ、「カレーそば」にして楽しむのだろう。「沖縄そば」は、実に自由な食べ物だ。
地域によって特性が異なるのも、「沖縄そば」の奥深いところ。
例えば宮古島では、地元で進化した「宮古そば」が主流だ。沖縄本島を中心に広まる「沖縄そば」とは、麺もスープも少しずつ異なる。
まず、麺はしっかりとしたコシが特徴の細めストレート。つるっとした喉ごしの「沖縄そば」と比べると、ワシワシと噛んで味わうタイプと言える。
スープは、豚骨の旨味があるものの、かつおが強めですっきりとしたものが多い。最後の一滴まで飲み干したくなる美味しさだ。
ちなみに昔ながらのそば屋では、「宮古そば」を頼むと、麺の上にネギだけがのったそばが出てくる。不思議に思って箸で麺の中を探ると、中から三枚肉やかまぼこが顔を出すのだ。
諸説あるが、私が宮古島の“おばあ”(沖縄で高齢の女性に対する愛称)から聞いた話では、「昔は子だくさんの家が多かったから、肉の数や大きさがもとできょうだい喧嘩が起きないようにと、具を麺の中に隠して出していたんだ」とのこと。
今でも「宮古そば」をいただく時は、宮古方言まじりで話してくれたおばあの優しい顔が浮かんでくる。
食と文化、思い出は、切っても切れない縁で繋がっている。
「沖縄そば」と「宮古そば」の明確な違いに気づいてからは、沖縄に行くたび、地元のそば屋に飛び込むのが決まりになった。
スープの違いや具の違いから、勝手にほかの食文化まで想像して楽しむのだ。
しかし、同じ島の中でも、店によって大きく味が異なる時もしばしば。一筋縄ではいかない。だからこそ食は面白い。
次に訪れた時は、行きつけの店にするか、新しい店に挑戦してみるか。時間はある。じっくり悩んでおこう。
西表島の沖縄そば
宮古島の沖縄そば
沖縄本島の沖縄そば
竹富島の沖縄そば
与那国島の麺